5/14 人間関係の基礎的意義(4)

テキストp8のEriksonの発達段階について考えてみることにする。

Eriksonは人間の発達段階を8段階で説明している。彼の8段階の視点は,社会的危機という考え方で設定している。即ち,各発達段階にはそれぞれ危機があるということです。危機とは,危険と機会ということを意味します。各時期は次の発達段階での機会になる。この機会をうまく乗りこえないと社会的適応がうまくできなくなる。

今回は,幼児期,乳幼児期について説明することにする。Eriksonの発達段階
・乳児期 基本的信頼 vs.基本的不満
・幼児期初期 自立性 vs. 疑惑
・遊戯期 積極性 vs.罪悪感

2歳~3歳にかけて、子どもは自我が芽生えてくる。何事も母親に依存していた乳児が、身体的に発達してきて、歩行にしてもよちよち歩きから、少しずつスムーズに力強く歩行できるようになってくる。手指の微細運動もそれなりにできるようになり、精神的にも自分というものを感じて行動ができるのが幼児期初期である(自我の芽生え)。

そこで重要なことは、その前の乳児期での愛着行動(アタッチメント)が正常に形成されてきたかということが問われる。正常な愛着形成の基本は、母子関係が正常であるかどうかで決まる。愛着とは「ある特定の人の間に形成される心の絆」といえる。母親を安全基地としてアタッチメント行動ができるかということが重要なことである。ストレンジ・シチュエーション法を思い出してほしい。四つのパターンがあった。①回避群 ②安全群 ③両面価値群 ④非構成的・非指向的群である。講義で強調した群は、③両面価値群である。母親に対して接近と回避を示す行動である。

先ずは、下図に示したアタッチメントを説明する、ストレンジ・シチュエーション法をビデオで確認することからはじめる。
その後、NHKのごく最近の番組で、「アタッチメント」の特集があったので、そのビデオも上述のビデオと比較して、アタッチメントという概念が、昨今重要になっている状況を理解しょう。

上述の資料の入手には以下をクリックして下さい。
https://www.neuropsychology.jp/wp-content/uploads/2023/05/strange_stuation_procedure-scaled.jpg

p67 集団での問題解決と意思決定
家族という集団を理解するあたって、リーダーシップとPM理論の観点から理解しよう。
PM理論とは

シングルマザーの沖縄での子育てを例として説明する。
アタッチメントでいう主たる対象者は母親であるといえるが、何も母親に限ることでない。対象者が父親でもいいし、祖父母でもいい。その対象者が存在しているということが重要になってくることを忘れないでほしい。

沖縄の子育てを考えたとき、本土の先を行っている現象の一つにシングルマザーの数の多さである。それは離婚率の多さにも関係する。沖縄と北海道が離婚率が高い。離婚すれば子育ては一人親ということになる。特に、沖縄の母親の就労の所得は低すぎる。子どもを養うにして、経済的余裕がなくなる。仕事を掛け持ちしたりして収入を増やす努力をすれば、どうしても子どもとの接する時間的余裕もなくなってくることになる。その結果、子どもとの関係性の余裕もなくなるのだ。関係性とは愛着と言い換えてもいい。

愛着の視点からすれば、由々しき問題である。乳児期、幼児期、児童期までは子どもと配偶者との関係性が、子どもの後の健全な発達のために重要である。

自分のアタッチメント・スタイルを検査してみよう。アタッチメントスタイル尺度
https://www.brieftherapy-counseling.com/attachmentstylediagnosis.html


https://www.neuropsychology.jp?download=2658&tmstv=1716182891


課題 自分のアタッチメント・スタイルを分析してみよう。回避型、不安型、安定型の現れ方はどうだったか。
締切厳守 6/15 pm5:00 締め切りました



5/7 人間関係の基礎的意義(3)

「積み木の家」短編アニメーションを鑑賞
このビデオを見て、みなさん学生は何を感じますか。

人は,一生の中で,その時その時,いろいろな人との出会いがありその影響を受けながら生きていく。ある時ふと,あの人の影響を大きく受けた,その影響が今の自分の一部になっている。なんてことを人は思うことがある。言うまでもなく人は日々常に他人との関係の中で生きているのであるが,そのことをただ意識していないだけである。
過去の思い出は,どんなに楽しい思い出でも,またどんなに悲しい思いでも過去の出来事として思い出される。その時の強い正,負の感情は意識的には理解できも同様な感情を伴って思い出されることはない。過去のある時,ある時点での出来事になっていく。しかし,もし,その出来事を感情を伴って現在今でも現れるとすれば,その記憶である出来事は過去の話ではない。いわゆるそれはトラウマ(心的外傷後ストレス障害)となって自己の現在の生活でストレスを生んでいることになる。そのことで,今も心が乱れ,精神的にも生理的にも何らかの障害を生じているとすれば,その解決か解消が必要になる。
この講義の目標は,心身的な自分と発達途上にある自分について,自分の置かれている環境を熟知することによって,人間関係の視点から自分(自己)を見つめ直すことである。言い換えると,心身共に健康的で,前向きに生きていくその指針の獲得を目標としている。

次に,Eriksonのライフサイクル論について学ぶことにする。(テキストP7 人間発達参照)

課題 今の自分(自己)に一番影響を与えて人は誰、その人からどんな影響を受けたのでしょうか。エピソード(具体的な出来事)を交えて語ってください。
締切厳守5/8 PM 5:00

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4/30 人間関係の基礎的意義(2)

自分とはどういう人間か? 自己認知とは

これまで2回の講義を行いました。非常に真面目に視聴してくれているというのが,僕の皆さんに対する感想です。また,皆さんから送られてくるコメントを読んでも真面目に丁寧に書かれているという印象です。このような態度が最後まで続くと,この講義は成功です。皆さん頑張りましょう。

ところで,前回の講義では,非言語情報が対人関係において重要なサインになることを,脳に備わったミラーニューロンという概念で説明した。鳥類などは音声信号を通してお互いの位置情報を交換して集団として行動することも説明した。特に人間にとっては,言語という機能を獲得したことでお互いのコミュニケーションを豊かにしてきた。しかし,お互いの非言語性の情報交換が人間関係には非常に重要になること,特に人の感情を読み取ったりすることが,社会性を育む上で重要になる。一言で言うならば,対人関係では他人と自分の脳を共有することになる。
「母親と子どもたち」,「先生と生徒」そして「友と語らう」など、すべては他人の脳と自分の脳を共有して会話をしているのである。人間としての会話を成立させるためには,先ずは健全な脳をもっていなければならない。知的な水準が低い人や、精神的に病んでいる人との脳の共有は困難である。私たちは常に健全な脳を育むことに努力して行く必要がある。

赤ん坊が乳児になり,それから幼児,児童,青年となる成長段階を考えた場合,そこには健全な脳を育む教育が必要になるだろう。そのためには家庭,学校,それから我々を取り巻く社会環境が健全でなければならない。

以下は前回までの復習と重なるところがありますが,「人間関係論Jを学ぶには, 2つの軸があること。
一つの軸は人聞は成長・発達する中で, 言い換えると子どちから大人になる過程で,他者との関わりの中で生きていくという軸です。すなわち,人間は集団の中で常に生きていく存在を表す軸です。言い換えると,生まれてから死に至るまで時間軸の中で,いろいろな他者との関わりを持って生きていく。その中で自分という存在があるのです。
もう一つの軸は,個人そのものについて考える軸です。自分とは何か,自分はどんな人生を送っていきたいのか。自己を熟知する必要があります。すなわち,I know myeself ということになります。
すなわち,自己理解,さらに、現実の自己,理想的な自己像、クローズな友がみている私の自己像を自己分析することによって、自分が今まで気づいてない自己像を客観的に評価することによって,今までと違った自分に気づく助けとなる。

Who am I ? テストで、わかることは、実習してみよう。

自己評価チェックリストで、自己評価
自己像とはどう説明すればいいのか、心理学的に説明が必要であろう。
考察の観点は,
・自己の在り方と対人関係の2点で,現実の自己評価はどうであったか。
・現実自己評価と理想自己評価とを比較して,その結果はどうか。
・現実自己評価と他者からの自己評価との比較ではどうか。

この課題を実施した理由は、テキス卜の第1章人間関係の中の自己と他者 B.自己認知 C.他者認知の講義内容を、ワーク実践からはじめ、理解を容易にするためである。
テキス卜のB.自己認知c.対人認知について説明 P4~。

今日の課題
今日の実習で,どのような結果よって,どのような自分に気づきましたか。
締切 5/1 pm 5:00まで(時間厳守)

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4/23 人間関係の基礎的意義(1)


人間関係論の講義では,先ずは,前回の3つの資料説明からはじめます。

私たちが生きている現在と150年ほどの昔とは,平均寿命が全然違う。
150程前,丁度日本では江戸時代から明治時代に変わるときであった。人生50年であった,今では50歳といえばまだ現役の働きざかりの大人である。当時の特徴は,老年期という時期が非常に短い。病気や種々の原因で人は短命であったので老年期を過ごす老人は絶対的数では少なかったことが考えられる。だから,当時は長老ということばがしめすように,高齢者は尊敬され崇められていたに違いない。現在は,近い将来四人に一人は70歳以上の人がしめると言われている。現在高齢期の延長が生じており,高齢者の心理,社会的問題が学問上も重要なテーマとなっている。
一方,青年期ということばも150年前には存在してなかった。その時代は一晩にして子どもから大人になる時代であった。身体的にはすこしずつ成長して身体は大人になっていくのだろうが,精神的には元服などの儀式を通して,明日から大人として子どもは扱われることになる。その最たるものが,13歳になったら,自分の行いは自分で責任を取るということが社会から求められていたのだ。大人の責任の取り方は,武士であれば切腹という方法であったのだろう。現代はこの青年期の延長が特徴となっている。子どもから大人になる間に20年近くをマージマルマン(周辺人)として,大人でもない子どもでない時代を過ごすことになる。まさに受講生の皆さんはこの時期を過ごしていることになる。それではこの時期の精神的構造はどうなっているのであろうか。心理学はこの時期の青年の心理・社会的特徴を研究する学問でもある。



次に,人間は社会的動物であるといわれるが,生まれてから死に至るまで,いろいろな社会との関わりの中で生きている。先ずは母親との関係,それから家族,それから社会,その後は回帰してまた家族との関係が強くなり年老いていく。誰と関わったかということが自分の将来に大きく関わる,皮肉にもその時はよくわからないが,過去を振り返ったとき,当時に関わった人の影響を強く受けていることを実感する。

最後に,人の精神機能は脳の発達とともにある。各発達段階で脳の発達の特徴は大きく異
なる。しかしここで重要なことは,人間は無人島では生きていけない。常に他人の脳と脳
を共有しながら脳と心は発達していくのである。この違いが個性を生むことになる。


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4/16 第1回オリエンテーション

ここ数年間、講義では学生のマスク姿で講義時の学生の反応がイマイチ読み取れない状態での講義でした。この講義はタイトルで示しているように、「人間関係論」で、人との関わりについて心理学や脳科学を中心に講義する科目です。

他人とのコミュニケーションということを常に意識しなければなりません。人とのコミュニケーションは、言語的なコミュニケーションと非言語的なコミュニケーションがありますが、マスクをして目だけでは、相手の表情などの非言語的な情報を認識することが十分でないということになります。たとえば、相手が「好きよ」といっていても、表情等の非言語なサインでは、全くそうでないかもしれません。その微妙なサインを私たちは無意識的に処理し、相手の心を読んでいるのです。

今年も「人間関係論」の講義を私が担当することになりました。
今日は,ますはじめに,オリエンテーションを通して、講師の紹介と講義内容について概略を理解して戴きます。

講師は琉球大学名誉教授・富永大介が担当します。

私は、長らく浦添看護学校で心理学関係の講義を担当して来ました。琉球大学や他の沖縄の大学や沖縄県内の看護師養成機関の大学、専門学校で教鞭を執ってきました。また、琉大の病院で長らく神経心理学の観点から、多くの患者さんとお付き合いをして参りました。そのような経験を踏まえて、講義を展開して行きたいと考えています。また私は客員教授として、スウェーデンのカロリンスカ大学で研究と教育に携わっていましたので、その時の経験をこの講義の中で少しは生かして行きたいと考えています。


人間関係論を学ぶにあたって、基本的に理解しておくことは,縦と横の軸で捉えるということ。縦の軸は,言い換えると時間軸と考えることができます。人は生まれてから死に至るまで,人生百年時代を生きていくのです。乳幼児期から高齢期までの人生を見据えた人間関係を理解すること。もう一つの軸は個人の軸です。人と人との関係の軸です。人は一人では生きていけません。いつも自分の周りには他人がいます。家族であったり,友達であったり、恋人であったり、その人間関係の中で生きていっているのです。対人関係の心理的理解が重要になってきます。言語的なコミュニケーションばかりでなく、非言語的なコミュニケーションも他人を理解する上で重要な情報を提供してくれます。


次に,人間は社会的動物であるといわれていますが,生まれてから死に至るまで,いろいろな社会との関わりの中で生きている。先ずは母親との関係,それから家族,それから社会,その後は回帰してまた家族との関係が強くなり年老いていく。誰と関わったかということが自分の将来に大きく関わる,皮肉にもその時はよくわからないのですが,過去を振り返ったとき,当時に関わった人の影響を強く受けていることを実感を体験するでしょう。

最後に,人の精神機能は脳の発達とともにある。各発達段階で脳の発達の特徴は大きく異なる。しかしここで重要なことは,人間は無人島では生きていけない。常に他人の脳と脳を共有しながら脳と心は発達していくのである。この違いが個性を生むことになる。

講義資料 添付 「社会脳の視点からage, family,mirror neuron」
https://www.neuropsychology.jp/wp-content/uploads/2024/04/0260df91e4ff0131ab9f5bdd2cd90c59-1.pdf

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