4/22,24 第2回の講義では、生涯発達心理学の講義資料として、アニメーション「つみきのいえ」を視聴した。
その後、学生に対して、「このビデオで、一番印象に残った場面はどこでしたか」
という問いかけを行った。
学生コメントの要約
- 水の中へ潜る場面を通して、過去の家族との思い出がよみがえる様子に、多くの学生が強い印象を受けていた。
- 老人が一人で静かに暮らす姿から、「老年期の孤独」や「大切な人を失うことの寂しさ」を感じ取っていた。
- 上へ上へと家を積み重ねる様子を、「人生そのものの積み重なり」として理解している学生が多かった。
- セリフの少ない作品でありながら、音楽や表情、静かな空気感から、「懐かしさ」「悲しみ」「温かさ」など、複雑な感情を受け取っていた。
- 妻や子どもとの生活の記憶に触れながら、「人とのつながり」が人生の支えになっていることを感じていた。
- 「水は時間の流れを表している」「家は人生そのものを象徴している」といった、象徴的な理解をしている学生も多くみられた。
まとめと感想
「つみきのいえ」は、大きな出来事や多くの言葉によって物語を展開する作品ではない。しかし学生たちの感想を読んでいると、それぞれが自分自身の家族や人生を重ね合わせながら作品を受け止めていることが伝わってきた。
特に多くみられたのは、主人公の老人が水の中へ潜り、過去の暮らしを振り返る場面への反応であった。学生たちは、その場面を単なる「昔の思い出」としてではなく、「人生をもう一度たどり直している場面」として受け取っていたようである。
心理学では、「いつ、どこで、誰と、何を経験したか」という個人的な出来事の記憶を「エピソード記憶」という。たとえば、「子どもと食卓を囲んだ」「妻と出会った」といった、一つひとつの具体的な経験の記憶である。
一方、「自伝的記憶」とは、そのような多くのエピソード記憶が積み重なり、「自分はどのような人生を生きてきたのか」という人生全体の物語としてまとまった記憶を指す。つまり、自伝的記憶とは、単なる出来事の記録ではなく、「自分という存在」を支えている人生の記憶である。
本作品の主人公の老人は、水の中へ潜るたびに、かつて家族と暮らしていた部屋や、その時々の生活場面を思い出していく。しかし、彼が振り返っているのは単なる過去の出来事だけではない。妻と過ごした時間、子どもの成長、家族とともに生きた年月など、自分がどのような人生を歩んできたのかを、ひとつひとつ確かめ直しているのである。その意味で、水の中へ潜る行為は、主人公が自らの「自伝的記憶」をたどり直している姿として理解することができる。
また、多くの学生が、老人の孤独だけではなく、その背景にある「家族とのつながり」や「ともに過ごした時間の重み」に目を向けていたことも印象的であった。セリフを多用せず、表情や音楽、水の深さ、部屋の風景などによって感情を表現するこの作品は、人の心の奥に残り続ける記憶や感情について、見る側にゆっくり考えさせる力を持っている。
皆さん自身も、これから多くの人と出会い、多くの経験を重ねていく。その一つひとつの経験が、やがて自分自身の人生の記憶となり、人生を支える「こころの積み木」になっていくのであろう。