青年期後期(20〜30歳頃)は、心と脳が大きく成長し、自立と社会的関係の成熟を目指す重要な時期である。特にこの時期には、心理的な自立と社会的な役割確立が求められる。エリクソンの理論では「親密性 vs 孤立」という課題があり、思春期に確立された自我同一性を基に、社会の中で自らのあり方を模索することが求められる。マルシアは、自我同一性の発達を4つのステータスに分類し、青年期後期では「達成」型が多く、自らの価値観に基づき職業や人生の方向性を定める力が育まれる。
この過程では、自己決定が増え、その選択に対する責任感が求められる。自己決定理論では、自分の内面の動機に従って行動できることが重要とされる。また、理想と現実のギャップに直面することも多く、困難に対処するためには自己効力感が支えになる。自己効力感が高いと、失敗しても前向きに挑戦を続けることができる。看護学生にとっても、専門性と自分らしい生き方を結びつけることが重要な課題となる。
さらに、青年期後期は人間関係が深まる時期でもある。表面的な付き合いから、互いを尊重し合う深い関係へと移行し、恋愛や友情を通じて親密性が発達する。感情調整能力や対人スキルが求められ、異なる価値観に触れることで視野が広がる。このような経験は、看護現場で患者と良好な信頼関係を築く力にもつながる。
自己探求もこの時期の重要なテーマであり、自己効力感を高めながら現実と理想のすり合わせを行う。これにより、より柔軟で現実的な自己像が形成される。看護学生も、患者との関わりを通して自らの看護観を深め、援助者としての自己を育てていく。
脳の発達に目を向けると、前頭前野の成熟が進み、感情や行動をコントロールする力が向上する。自己制御能力が発達し、目標に向かって行動できる力が強まる。また、社会的経験を積むことで、感情のコントロールや柔軟な思考力が養われる。これらは看護師として必要な対人援助スキルの基盤となる。
さらに、青年期後期は「達成動機」と「親和動機」が強まる時期でもある。達成動機は「成功したい」という願望を支え、学業や仕事への意欲を高める。一方、親和動機は「人とつながりたい」という欲求に基づき、良好な人間関係を築こうとする力になる。また、SNS利用が自己イメージに与える影響にも注意が必要であり、社会的比較による自己肯定感の低下リスクが指摘されている。青年期後期のメンタルヘルス支援においては、非言語的サインへの配慮や安心感の提供が信頼関係構築に寄与し、早期介入が予後を左右する。
このように、青年期後期は心と脳が大きく成長し、自己理解と社会的スキルを深めると同時に、揺れながらも自己を成長させる時期である。看護学生にとっても専門性と生き方を統合し、自らの看護観を確立していく過程として極めて重要な時期である。
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親和動機と達成動機」の観点から、自分の結果をどう解釈するか。