この章では、生まれてから1歳ごろまでの乳児の心と脳の発達について、看護の視点から取り上げた。乳児にとって最も大切なことのひとつが「愛着」である。愛着とは、養育者との間にできる安心できる心のつながりのことであり、乳児が人を信じたり、外の世界に興味をもったりするための土台になる。愛着がしっかりと育つことで、乳児は安心して笑ったり、泣いたり、さまざまな感情を表現できるようになる。
愛着のはじまりには、「共同注視」や「社会的微笑」など、赤ちゃんと養育者が目と目を合わせたり、一緒に物を見たりするやりとりが関わっている。また、愛着の形成には、養育者が乳児の気持ちに気づき、やさしく反応する「感受性」が大切であることも説明されている。
さらに、この章では乳児の脳の発達についても取り上げている。乳児の脳は生まれたときには未熟であるが、経験やふれあいによって急速に成長していく。神経の伝わり方がスムーズになる「髄鞘化」や、視覚や聴覚などの感覚をまとめて処理する「感覚統合」といったしくみが、赤ちゃんの学びや動き、感情の発達を支えている。
また、愛着が脳の働きにも影響を与えることがわかってきている。養育者との温かいふれあいは、オキシトシンというホルモンを分泌させ、乳児に安心感をもたらす。こうした愛着の経験が、将来の社会性やストレスへの強さにも関係してくるのである。
看護の現場では、乳児とその家族がよい関係を築けるように支援することが求められる。愛着と脳の発達について理解を深めることは、看護師として乳児の健やかな成長を支えるためにとても大切である。

https://wp.me/a9O0e7-Mg オキシトシンの説明