どうして赤ん坊を左胸に抱くのか,実験してみよう。
学生ボランティア10名に前に出てもらった。そして,講師が各学生に新婚時を想起してもらい,一つは,スーパーでの週末の買い出しを想像してもらい,もう一つは最初の赤子と対面したときの抱き方のポースを取ってもらった。そうすると,買い出し袋では正面に両手で抱えるように持ったが,初対面の赤子の場合は約8割の学生が左胸に赤子の頭が向くように抱いた。赤子を自身の心臓の上の胸に抱く,これが一般のおかあさんの赤子の抱き方なのである。もし,そうでない抱き方であれば,母親の養育に対する何らかの背景に問題を抱えている可能性とする研究結果を紹介した。
今日の講義内容
幼児とその母親との関係に基づく基本的信頼関係の獲得には,愛着の問題が根底にある。
資料:2012_アタッチメント愛着 新訂発達心理学特論 放送大学 p46-56
https://www.neuropsychology.jp/wp-content/uploads/2023/06/2012_AttachmentP46-56.pdf
心理学ではこの愛着の現象についてアタッチメントという言い方で捉えている。ビデオでは,「小学生の幸美ちゃんの赤ちゃん返り」を視聴した。乳児院で育った幸美ちゃんは小学生になって,本当におかあさんは自分を愛しているのだろうかと無意識的に思うようになり,そのことを十分意識できず,行動で知ろうとしたのだ。人間は合理的に自分の行動を制御していると思っているが,実は無意識的な水準で行動を行っていることが多いのだ。愛情を確かめるに,周囲の人の嫌がることを敢えて行う。特に,幼児期,児童期,思春期にはこのような現象が多々見られるのだ。何歳になっても,第一の発達課題を乗りこえることはその後の人生に大きく影響する。
一方,里親のとった態度には感動する。幸美ちゃんの生い立ちについて手作りの絵本で示し,その内容について親が説明するのではなく,あくまでもご本人に絵の内容について説明させる。また,彼女が小学生の二三年生であったことがまたいい。心理療法の一つに,認知行動療法という技法がある。まさに,里親はこの認知行動療法を地で行っているといえる。
認知行動療法とは
学生はテキストの認知行動療法の箇所に目を通しておいて欲しい。p117参照
資料:マンガでやさしくわかる認知行動療法 玉井仁 日本能率協会 2019
https://www.neuropsychology.jp/wp-content/uploads/2023/06/0102_manga_CognitiveBehaivorTherapy.pdf
課題:赤ちゃん返りのビデオを視聴し,受講生はどう感じましたか。講義を通して,感じたこと,思ったこと,その他を書き上げ送信して下さい。
締切 6/22 pm5:00 時間厳守