人は何を求めて生きるのか――「成し遂げたい心」と「つながりたい心」

-達成動機と親和動機の理解-

自分にとって親しい友人を一人、思い浮かべてほしい。その人は、悩んだときに何でも話せる相手だろうか。それとも、互いに力を競い合い、自分を成長させてくれる相手だろうか。あるいは、よきライバルであると同時に、困ったときには心から相談できる、かけがえのない友人かもしれない。

私たちは毎日の生活のなかで、さまざまな願いに動かされている。喉が渇けば水を飲みたいと思い、空腹になれば何かを食べたくなる。それだけではない。試験に合格したい、仕事をやり遂げたい、今までできなかったことができるようになりたい、と願うこともある。

このような「何かを成し遂げたい」「自分の力を試したい」という思いを、心理学では達成動機と呼んでいる。

一方で、私たちには、誰かと親しくなりたい、喜びや悩みを分かち合いたい、自分のことを理解してもらいたい、という思いもある。これを親和動機という。少し難しそうなことばだが、要するに、人とつながり、ともに生きたいと願う心のことである。

達成動機と親和動機は、どちらが大切かを競うものではない。人の心には、この二つがともに存在している。ただし、その強さや現れ方は、人によっても、人生の時期によっても異なる。

幼い子どもが、一人で服を着たり、靴を履いたりできたとき、「自分でできた」と得意そうな顔をする。しかし、その直後に、近くにいる親の顔を見ることがある。自分でやり遂げたことを喜ぶだけでなく、その喜びを誰かに認めてもらいたいのである。そこには、成し遂げたい心と、つながりたい心の両方が表れている。

青年期になると、進学、部活動、資格の取得、職業の選択などを通して、自分の力を試す機会が増える。同時に、仲間から認められたい、本音を語り合える友人がほしいという願いも強くなる。

この時期には、友人が競争相手になることもある。同じ試験を目指し、同じ競技で競い合う友人は、時には自分を焦らせる存在にもなる。しかし、競い合う相手だからこそ、自分の努力を理解してくれることもある。よきライバルと心を許せる友人は、必ずしも別の人であるとは限らない。

成人期には、達成とつながりの両立が、さらに難しくなる。仕事で成果を上げようとすれば、時間や労力を注がなければならない。その一方で、家族や友人との関係にも心を配る必要がある。

目標を持ち、それに向かって努力することは、人生に張りを与える。しかし、成果や他人からの評価だけを求め続けると、目標を達成しても満足できなくなることがある。一つの仕事を終えても、すぐに次の成果を求められるからである。成功したはずなのに、なぜかむなしい。そのようなときには、達成した喜びを分かち合う相手がいるかどうかを考えてみてもよい。

反対に、人とのつながりを重んじるあまり、自分の希望を抑えてしまうこともある。嫌われたくないので頼みを断れない。仲間から外れるのが怖くて、自分の意見を言えない。周囲に合わせ続けるうちに、自分が何をしたいのか分からなくなる。人と親しく生きようとする心も、強くなりすぎれば、自分の人生を他人の期待に預けることになりかねない。

高齢期になっても、達成したいという思いがなくなるわけではない。新しい機器の使い方を覚える、庭の手入れを続ける、文章を書く、旅行を計画する、孫に自分の経験を伝える。若い頃とは目標の内容が変わっても、「やってみたい」「できるようになりたい」という心は生き続ける。

人とのつながり方も変化する。仕事を通じた広い人間関係から、家族や長年の友人など、本当に大切な人との関係へと重心が移ることもある。それは、つながりを求める心が弱くなるということではない。むしろ、誰と時間を過ごしたいのかが、よりはっきりしてくるのである。

達成と親和は、互いに邪魔をするだけのものではない。誰かに励まされるから、新しいことに挑戦できる。誰かと力を合わせて一つのことを成し遂げるから、関係が深まる。人に支えられて目標に向かい、目標に向かう過程で人とのつながりが育つ。私たちは、そのような循環のなかで生きている。

達成動機と親和動機ということばを、性格を分類するための物差しとして使う必要はない。仕事では達成を重んじ、家庭ではつながりを求める人もいる。若い頃は目標に向かって走り続け、年齢を重ねてから人との関係の大切さに気づく人もいる。その反対もあるだろう。

大切なのは、自分がどちらの型に属するかを決めることではない。

いまの自分は、何を成し遂げたいと思っているのか。その歩みを、誰と分かち合いたいのか。目標を追うあまり、大切な人との関係を後回しにしていないか。人に合わせるために、自分の願いを諦めていないか。

「成し遂げたい心」と「つながりたい心」は、自分の生き方を見つめ直すための二つの窓である。人は何を目指しているのかだけでなく、誰と生きたいのかを考えながら、自分の人生を形づくっていくのである。

あわせて、「心と脳の理論」の「なぜ始め、なぜ続け、なぜ諦めるのか――動機づけから人間を考える」もご覧ください。