パーソナルブランドとは「自分の生き方の輪郭」である

大学を巣立つ学生たちに向けて、「パーソナルブランドをつくりなさい」と伝えたことがある。自分を磨き、自分なりの価値をもって社会に関わっていくことの意味を言葉にしようとしたのである。

ただ、この言葉を時間をおいて眺めてみると、少し別の見え方もしてくる。パーソナルブランドという表現は、他者からどのように評価されるか、あるいはどのように認識されるかという「外からの価値」に結びつけて理解されやすい。しかし実際には、それはもう少し内側で進んでいく過程に近いもののように思われる。

それはむしろ、「自分はどのように生きていくのか」という問いに向き合う中で、少しずつ形をとっていく“生き方の輪郭”である。

20代後半から30代にかけて、多くの人がいくつかの問いに出会う。自分は何を大切にして生きたいのか。どのような仕事や人との関係の中で日々を過ごしていきたいのか。限られた時間とエネルギーを、どこに振り向けていくのか。

こうした問いには、明確な答えがすぐに見つかるわけではない。むしろ、迷いながら選び、選び直しながら進んでいく中で、自分なりの傾きのようなものが見えてくる。

発達心理学では、この時期は青年期の延長線上に位置づけられ、「自分とは何者か」という問いに続いて、「自分はどのように生きるのか」という問いが現実の重みを伴って立ち上がる段階であるとされている(Erikson)。

このとき、他人と違う何かを意図的に作り出そうとする必要はない。経験してきたこと、関心を向けてきたこと、人との関わりの中で繰り返してきた選び方の中に、その人らしさはすでに現れている。自分では当たり前に感じているその選び方が、他者から見たときには特徴として受け取られることもある。

外からどう見られるかを整えるよりも、自分が何に納得して選んでいるのかをたどっていくこと。その積み重ねが、結果として他者からの信頼や安心感として伝わっていく。

社会に出てからの時間の中で、友人と語ること、思いどおりにいかない経験を重ねること、迷いながら決めていくこと。その一つひとつが、生き方の輪郭を少しずつはっきりさせていく。

はっきりとした答えがまだ言葉になっていなくてもかまわない。ただ、「自分はこういうことに重みを感じるらしい」と気づく瞬間があるならば、そのときすでに、その人なりの生き方は動き始めている。