4/23 人間関係の基礎的意義(1)


人間関係論の講義では,先ずは,前回の3つの資料説明からはじめます。

私たちが生きている現在と150年ほどの昔とは,平均寿命が全然違う。
150程前,丁度日本では江戸時代から明治時代に変わるときであった。人生50年であった,今では50歳といえばまだ現役の働きざかりの大人である。当時の特徴は,老年期という時期が非常に短い。病気や種々の原因で人は短命であったので老年期を過ごす老人は絶対的数では少なかったことが考えられる。だから,当時は長老ということばがしめすように,高齢者は尊敬され崇められていたに違いない。現在は,近い将来四人に一人は70歳以上の人がしめると言われている。現在高齢期の延長が生じており,高齢者の心理,社会的問題が学問上も重要なテーマとなっている。
一方,青年期ということばも150年前には存在してなかった。その時代は一晩にして子どもから大人になる時代であった。身体的にはすこしずつ成長して身体は大人になっていくのだろうが,精神的には元服などの儀式を通して,明日から大人として子どもは扱われることになる。その最たるものが,13歳になったら,自分の行いは自分で責任を取るということが社会から求められていたのだ。大人の責任の取り方は,武士であれば切腹という方法であったのだろう。現代はこの青年期の延長が特徴となっている。子どもから大人になる間に20年近くをマージマルマン(周辺人)として,大人でもない子どもでない時代を過ごすことになる。まさに受講生の皆さんはこの時期を過ごしていることになる。それではこの時期の精神的構造はどうなっているのであろうか。心理学はこの時期の青年の心理・社会的特徴を研究する学問でもある。



次に,人間は社会的動物であるといわれるが,生まれてから死に至るまで,いろいろな社会との関わりの中で生きている。先ずは母親との関係,それから家族,それから社会,その後は回帰してまた家族との関係が強くなり年老いていく。誰と関わったかということが自分の将来に大きく関わる,皮肉にもその時はよくわからないが,過去を振り返ったとき,当時に関わった人の影響を強く受けていることを実感する。

最後に,人の精神機能は脳の発達とともにある。各発達段階で脳の発達の特徴は大きく異
なる。しかしここで重要なことは,人間は無人島では生きていけない。常に他人の脳と脳
を共有しながら脳と心は発達していくのである。この違いが個性を生むことになる。


「ためしてガッテン』のビデオで人間関係の意義について考えてみることにする。
人の脳は生まれる以前の胎児から,母親の声などの外部から音声,音楽を認識していることがわかっている。その音声に合わせて,胎児は身体を動かしていることも知られている。ということはどういうことか。音を認識したりする脳の場所や身体を動かす命令を出す脳の場所はすでに出来上がっていることを意味する。ここで重要なことは,ミラーニューロンという概念を理解することである。

ミラーニューロンは,人間などの生物には本来的に備わっていると考えられている。集団の中で生きる生物にはミラーニューロンが存在するといえる。例えば,空を飛ぶ鳥類は、一匹では遙か遠い地域に飛んで行くことはない。かならず集団を組んで遠いところから飛来してくるのだ。お互いに彼らは音声による会話をとおして,集団として行動するということだ。

人間は生誕後,このミラーニューロンを言語の発達として進化させていく。言語の獲得に特に重要な他者は母親であろう。母親との相互作用を通して,非言語的及び言語的コミュニケーションにおいてミラーニューロンが大いに関わっている。胎児から乳児,そして幼児の時期にはミラーニューロンを通して、認知機能や社会性の発達が育まれると考えられよう。

ところで,人とのコミュニケーションは,言語以外の非言語的な情報交換が活用される。他者との表情や目の動きなどの非言語的な情報交換にもミラーニューロンの活動が関わる。言語や非言語情報を通して、他者と知識や感情の交換を行うことは,言い換えると,脳を共有しながら人間は人として成長・発達していくのである。更に人の心の発達には前頭前野の発達が大きく関わっており,その前頭前野を他人と共有しながら、乳児から老人に至るまで生活していくことになる。図(他人との脳の共有)をこの講義ではいつも意識しておいて欲しい。

今日の課題 : ためしてガッテン「ミラーニューロン仮説(社会脳)」で、人間関係の何を学ぶことが出来るでしょうか。
締切 4/24 pm5:00 時間厳守