人間関係論の講義では,先ずは,前回の3つの資料説明からはじめます。
私たちが生きている現在と150年ほどの昔とは,平均寿命が全然違う。
150程前,丁度日本では江戸時代から明治時代に変わるときであった。人生50年であった,今では50歳といえばまだ現役の働きざかりの大人である。当時の特徴は,老年期という時期が非常に短い。病気や種々の原因で人は短命であったので老年期を過ごす老人は絶対的数では少なかったことが考えられる。だから,当時は長老ということばがしめすように,高齢者は尊敬され崇められていたに違いない。現在は,近い将来四人に一人は70歳以上の人がしめると言われている。現在高齢期の延長が生じており,高齢者の心理,社会的問題が学問上も重要なテーマとなっている。
一方,青年期ということばも150年前には存在してなかった。その時代は一晩にして子どもから大人になる時代であった。身体的にはすこしずつ成長して身体は大人になっていくのだろうが,精神的には元服などの儀式を通して,明日から大人として子どもは扱われることになる。その最たるものが,13歳になったら,自分の行いは自分で責任を取るということが社会から求められていたのだ。大人の責任の取り方は,武士であれば切腹という方法であったのだろう。現代はこの青年期の延長が特徴となっている。子どもから大人になる間に20年近くをマージマルマン(周辺人)として,大人でもない子どもでない時代を過ごすことになる。まさに受講生の皆さんはこの時期を過ごしていることになる。それではこの時期の精神的構造はどうなっているのであろうか。心理学はこの時期の青年の心理・社会的特徴を研究する学問でもある。
次に,人間は社会的動物であるといわれるが,生まれてから死に至るまで,いろいろな社会との関わりの中で生きている。先ずは母親との関係,それから家族,それから社会,その後は回帰してまた家族との関係が強くなり年老いていく。誰と関わったかということが自分の将来に大きく関わる,皮肉にもその時はよくわからないが,過去を振り返ったとき,当時に関わった人の影響を強く受けていることを実感する。
最後に,人の精神機能は脳の発達とともにある。各発達段階で脳の発達の特徴は大きく異
なる。しかしここで重要なことは,人間は無人島では生きていけない。常に他人の脳と脳
を共有しながら脳と心は発達していくのである。この違いが個性を生むことになる。
